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Past Exhibition

Raum

榎倉 康二

点展

2010.3.29 - 4.23

出品リスト

70年代、4回にわたって開催された「点展」はそのうちの3回が参加作家の自宅などで開催されました。本展覧会では参加作家の一人、榎倉康二が世田谷の自宅で行った展示を作家自らが撮影した当時の写真で構成しました。

1. 1973年「点展」での展示作品《予兆―土:自宅》の写真16点
庭の土を掘り起こして篩いにかけ、水で練って再び庭に塗りこめた作  品。時間が経過するにつれ、乾燥した土がひび割れを起こしていく。
2. 1975年「点展」での展示作品《予兆―柿の木・水》の写真3点 
自宅の庭にある柿の木の表面を、水が伝っていくインスタレーション。
3. 1976年「点展」での展示作品《予兆》の写真15点
会期中、決まった日の午後6時から7時に自宅でスライドによる作品を公開。
4. 関連作品
1973、1975年「点展」関連作品 シート1点
1976年「点展」関連作品 写真6点

展覧会概要

 画廊や美術館などでの作品発表ではなく自宅などで発表を行うのは、既成の施設での発表をさけ、より生活に近い場所での作品発表の試みだった。
作家グループにより1973年から1977年まで4回開催された「点展」で榎倉は3回にわたり自宅をその発表の場に使っている。いずれもコンセプチュアルな作品なのだが、発表の場が作家の子供の時から暮らした、父親のアトリエのある家であることが作品内容とかさなって、その作品を見る人に何らかの感慨を抱かせる。
 第1回は庭の柿の木の前に広がる地面を掘り起こし、水を加えてコテで塗り固めた作品で時間の経過とともに地表にきれいなヒビが入るという作品。
 第2回はその柿の木に水をはわせた作品。
 第3回は夕暮れ時に光源を感じさせるスライド上映を窓際で行うというもの。
 いずれの作品も作家が多くの写真を残していて、それらの写真により我々はその作品を知ることができる。興味深いのは第1回と第2回の作品が庭をそのまま利用した作品だということである。作家は後にこの2作品の写真とその後の1976年に撮影された庭と柿の木の写真を柿の木の幹をモチーフとしたシルクスクリーンの作品《予兆(木)》の上に貼りつけ、説明も書き加えている。そこからはこれらの作品に対する作家の愛着とその作品を理解してもらいたいという気持ちが伝わってくる。
 自宅での発表は、現代美術に関心のない近所の人が見に来てくれるという利点もあったかと思うが、観客数が限られるという欠点もあったようにも思う。

熊谷伊佐子