重苦しい空気が漂い、未だ出口が見えない今、塩原に住む戸村浩さんから自画像とも思える一篇の詩のような言葉が届きました。

* * *

ピタゴラスの正方形達の独立宣言

母から聞いたまだ私が幼児であった頃の話。3つ違いの兄と年子の姉と私は当時猛威を振るった腸チフスに罹り天津だか済南かの病院に入院したそうだ。寝ずの看病をしてくれた母はその緊迫した病棟の様子を語ってくれた。ある母親は看病に疲れ果てうとうとと眠りに吸い込まれた合間に、子供は息をひきとったと・・・
日本への早い引き揚げ、空襲、疎開、毎年の台風、時折の地震。
今私が生あるのは父母の愛情、隣人諸々の人々によって支えられてきたからだ。それに偶然かも知れない時間や空間のような大きな存在に後押しされて生き、成長してきた。
二十歳になる前石膏デッサンを最後に眼の前にあるものを美術の対象とすることをやめた。決して後ろ向きになるわけではない。
その摩訶不思議な時空帯から自分が押し出されるようにそこから抽出されたもの達に従い前に進む。


今 何故かピタゴラス