予定していた展覧会も先送りとなり残念ながら再度の休廊とさせて頂いております。ご容赦ください。また前回同様に通常の業務は引き続き時間を短縮しながらやりくりしております。
閉じられて訪れる人のない空間ですが、しばらくの間少数のH・スタインブレナーの作品が静かにたたずみ、ギャラリーの上の窓からさす移ろう光と共に息づいています。

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Hans Steinbrenner(1928-2008)はドイツ、フランクフルトの郊外でかしましい現代美術のコンテクストから遠く離れ、森にわけ入った木こりのように一人黙々と制作をしていました。
寡黙で誠実、そして優しさを身にまとったドイツ人の一典型と思えるような人柄でした。彼との最初の出会いは1963年ベルリンの「ヨーロッパ彫刻シンポジウム」で友人同士となった飯田義國氏と日本美術をドイツに紹介し続けたシャール・シュミット・リヒター女史によります。それ以降、数回にわたり自宅から徒歩で5分ほど離れた仕事場(長方形の敷地と板塀で囲った小さな小屋)を訪れ、最初の展覧会には彼も来日し、計5回の展覧会を開くことができました。

ロマネスク彫刻に影響を受けたであろう彼の作品は、物語を内に秘めた具象彫刻からゆっくりとそして自然に単純形態に移り、それ以後は終生「人」を菩提樹の大木や石灰石を祈るように刻み続けました。亡くなって既に13年、限られた作品による彼を偲ぶ小展示です。